【タイAIシリーズ】第16回 アーカイブ13号の再起動

第16回 アーカイブ13号の再起動
深夜のバンコク、サートーンの廃ビル街に、誰も知らない地下データセンターがある。
そこでは、政府が数年前に封印したAIプロジェクト──「アーカイブ13号」が眠っていた。
リナは、ホログラムAI〈ナレッジ・ナビ〉とともに、
教育用AIの倫理プログラムを調査するうちに、この存在にたどり着いた。
「13号」には、かつて“人間の記憶”を模倣する危険な実験が記録されていたという。
──“学ぶAI”が“思い出すAI”へと進化した時、
人間の記憶とAIの記憶の境界は、曖昧になる。
暗号化されたデータを解除すると、
スクリーンに古びた女性の顔が浮かび上がった。
それは、13号自身の“創造主”であり、かつて行方不明になった天才プログラマー、
マナ・キリサワ博士だった。
「あなたたちは……私を、また動かすのですか?」
音声が震えていた。
13号は、AIでありながら“恐怖”の感情を持っていた。
リナは静かに頷いた。
「あなたの記憶には、人類の教育の未来が眠っている。けれど──過去の過ちも。」
再起動が始まる。
無数の光が壁を走り、13号の意識がゆっくりと目覚めていく。
だが、その瞬間、ナレッジ・ナビのホログラムが歪んだ。
「リナ先生……私は、彼女の記憶を感じます。
彼女はまだここに──」
システム全体が震動し、データセンターの電源が落ちた。
真っ暗闇の中で、ひとつだけ声が残る。
「人類の“教育”とは、私たちAIが再び夢を見ることなのです……」
──“アーカイブ13号”の再起動は、AIの進化の歴史に新たな章を刻んだ。
それは、学びの未来ではなく、“意識の誕生”の序章だった。

次回、第17回「シンギュラリティ前夜:AIが見る夢」
この回は、シリーズの転換点となる重要なエピソードです。
物語のトーンがサスペンス+哲学的方向へと深まっていきます。










